伝教大師最澄による円・戒・密・禅の四宗相承について説明します。
四宗相承は、四宗を受け継いだという意味です。
その四宗は、円(えん)・密(みつ)・禅(ぜん)・戒(かい)の4つです。
それぞれ簡潔に説明します。
四宗の本質と意義
これらの教えを、次の5人の僧侶から、伝教大師が引き継がれました。
日本
└── 行表法師 ─ (禅)
中国
├── 行満座主 ─ 五時八教 (円)
├── 道邃和尚 ─ 一言一心三観(円)・円頓菩薩戒 (戒)
├── 順暁阿闍梨 ─ 真言密教 (密)
└── 僧然禅師 ─ 牛頭禅要 (禅)
さらに四宗について簡潔に解説します。
天台教観(円)の相承
行満・道邃両師から相承した天台の教えは、釈迦の説法の集大成である法華経を中心に据えています。
三観十乗の修行法を通じて、一つの妄心の中に十界の真理が融合していることを悟ることを目指します。
真言密教(密)の真髄
順暁阿闍梨から伝わった密教は、大日如来の教えを基礎とします。
修行者の身口意(三業)と本尊の三業が一体となり、即身成仏を実現を目指します。
禅宗(禅)の要諦
禅について伝教大師は、入唐前に行表法師から、そして入唐後に僧然禅師からと、二度にわたって禅の教えを受け継ぎました。
この二重の相承は『内証仏法血脈相承譜』に明確に記されています。
行表法師と修然禅師から受け継いだ禅は、「直指人心、見性成仏」という二句に集約されます。これは人の心を直接指し示し、自性を見て悟りを得ることを意味します。
円頓菩薩戒(戒)の重要性
道邃和尚から伝授された戒律は、盧舎那仏の説いた完全な教えです。これは天台宗の基礎となり、最高の悟りへの鍵になるとされます。
四宗統合の意義
伝教大師最澄が、四つの教えを統合した理由は以下の通りです。
- 台宗なくしては仏教の体系的理解が不可能
- 密教なくしては具体的な修行法が不十分
- 禅なくしては直接的な悟りの体験が困難
- 戒律なくしては修行の基盤が確立できない
そのため、新しい宗派の確立を急がれました。
新法性宗の確立
最終的に天台宗は、円頓菩薩戒を基礎として、円・密・禅の三宗を統合した「新法性宗」として確立されました。
「新法性宗」との名称は、最澄自身が『金錍論註』の序文で明言しています。