判釈(教えの分類)の必要性と大乗仏教の正統性

唯識の教相門について、しばらく話を進めます。

もともとすべての経典や論が同じ内容(一味)であれば、分類や優劣をつける必要はありませんでした。

しかし、大乗仏教と小乗仏教の分かれが生じ、異なる主張が出てきたため、教えを分類したり体系付ける「判釈」が必要となったのです。

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大乗仏教の正統性

小乗仏教の信徒は、「大乗仏教が仏説ではない」と主張する者もいます。

これに対し、唯識・大乗仏教の論師である無着菩薩は、著書の『顕揚聖教論』で10因(10の理由)を上げています。

また『成唯識論』では、無著著とされる『大乗荘厳経論』の中の七因(7つの理由)を示し、大乗が仏説であると反論しています。

さらに『成唯識論』には、次の理由を教えています。

本より、俱行するが故に、大小乗教は、本より来た俱行す。寧ぞ大乗独り仏説に非ずと知るや

(本俱行故大小乘教本來俱行寧知大乘獨非佛說)

引用:『成唯識論』

意味は、大乗経典も小乗経典も、共に仏陀釈迦から代々伝えられ、行じられてきたものであり、なぜ小乗だけを仏説とし、大乗を否定できるのか、ということです。

小乗仏教では一部の経典のみを仏説としますが、大乗仏教では、すべて経典が仏説であるとして大切に学ばせていただきます。

大乗仏教の伝承

大乗仏教の主張に対し、「ではなぜ仏滅後数百年間、大乗の明確な伝承の歴史的事実がないのか?」との反論があります。

その理由は、初期の大聖たち(例えば迦葉尊者や阿難尊者)が一般には小乗の声聞としての外見を保ちながら、内には大乗の教えを保持し伝えたためです。

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